これから人間性の原理と世界文明史の真相について申し上げる。事は世界宗教と科学に関する問題であるが、従来の宗教や哲学の上で神とか仏とか言われてきた薄ぼんやりした観念を説教するわけではない。日本を中心とする歴史の流れを説くのであるが、国体信仰とか民族信仰とかいうような、閉鎖された島国的思想に立脚した言挙げではない。また人間性の本質に徹底的に触れることとなるが、然し業縁とか煩悩とか或いは霊の作用とかいうような未解決な個人の物欲しげな暗中模索の内容を引きずり回すわけではない。

 神とか仏とか国体とか民族とか因縁とか霊とか、そうした問題の一切を明瞭に解決し得た結論である生粋の人間性の根本原理を三種の神器という。その神器を奉戴して全世界を指導経営して居られることが、惟神の日本天皇の天職である。その天皇(スメラミコト)の指導の下に生命の芸術である文明の創造に、仔々(しし)としていそしんでいる者が全人類である。その天皇(スメラミコト)の活動の全局についてこれから申し上げる。

 真理と歴史に関して、今日まで広く古今東西の諸先覚先輩が、入れ替わり立ち代り様々な研究結果を我々に遺してくれた。その研究はいずれも夫々の真理真実を示しているが、しかし、それは言わば猶ほ部分的であり断片的なものであった。そうした部分々々のすべてを一貫した道理の下に綜合組織統一し、過去現在未来を通じる歴史的因縁果報が由って来る所の人間性の根本原理を明らかにして、その因果の筋道を正しく整理することによって、皇祖皇宗の世界経綸が将来に予定し、その予定を釈迦やキリストをして予言せしめているところの霊肉不二一体の第三文明の時代を世界に実現する時となった。先覚達が苦心研究して遺して置いて呉れた夫々の部分である、たとえばエンジンや車輪やボデイや、ハンドルや計器を組立てて、完全の一台の車に仕立て上げて、これに全世界の人類を乗せ、正しい道路に沿って、有終の目的に向かって運転して行くこと、仏教の云う大乗の法を樹立し転輪することが我々の使命である。

 然し皇祖皇宗の経綸が予定している文明の有終の美が実現される事は、春夏秋冬のように放って置いても自然に巡ってくるわけのものではない。文明は自然現象ではなくして第二次的な人為現象である。人間が自覚して努力するからこそ到来する。自覚と努力がなければ世界は何時までも現在の劫来の渾沌状態で足踏みを続けているだけである。然もこの仕事は一人や二人の人間で為し得る仕事ではない。歴史と原理を会得した先駆者が協力して世界を覚醒し、現実を動かして行くことによって初めて成就する。

 本書の目次に掲げてある諸事項は十年前「第三文明への通路」と云う題で書いた三百五十枚ほどの原稿の内容に基づいたものである。出版の機会を待っていたがその時期に到らなかったところ、ヘプライ研究会の所望によって、その概要を披露することとなった。本書はその講演の原稿に更に筆を加えたものである。限られた短時間の講話やパンフレットでは全貌を尽くすることは到底不可能であって、粗筋と要点を掻い摘んだものであることを予めご了承願う。詳細はこの冊子を手にした人の質問に対する応答や、重ねての講演の機会に譲ることとする。世界歴史と三種の神器の学問に関する初歩の入門解説のパンフレットも出来ているから、次々にまとめて出版して行く予定である。